日寛上人 戒壇の「事」「義」 5(法華取要抄文段 その1)

「事の戒壇」「義の戒壇」

次に法華取要抄文段。まずは彼の意見を再確認する。

二重の義

結論から言ってしまえば、この法華取要抄文段にも事相に約しての「義」と法体に約しての「義」が織り込まれている。つまり「二重の義理」、「二つの物差し」が併行して説かれているのである。しかしながら彼の主張は大多数の顕正会員さんが陥る「事相に約しての義理」しか目に入っていない。よって最終的に矛盾もまた生じるのである。

以前にどこかで書かせて頂いたが、ここで彼は「根源と枝流」の比較を広宣流布後の比較相対であるとしている。確かにそのように仮定すれば嫡々書写の本尊安置の処が「義の戒壇」であり、御遺命の戒壇が「事の戒壇」となり、立て分け自体には一切の矛盾は生じない。しかしながら、その後の一節「 今(いま)日本国中の諸宗諸門の徒、何ぞ根源を討ねざるや。浅間し、浅間し云云 」の日寛上人の言葉が意味不明の代物になってしまうのだ。この一節は現在のことを言っている…。この矛盾を一体どうやって会通するのであろうか?

先に種明かしをしてしまえば、ここでの「根源と枝流」の話は前回の記事で取り上げた文底秘沈抄の「 問う、癡山日饒が記に云わく…」の邪義を受け、法体の立て分けに迷う者に対して、法体の根源と枝流のけじめをつける御指南をそのまま流用して法体に約しての「事」と「義」に言及されているのである。すなわちこの「根源と枝流」の部分での開合の相は次回に触れる「報恩抄文段での開合の相」そのものになっているのである。

法華取要抄文段

   第五 本門の戒壇を明かす

 

 

① 凡そ本門の戒壇とは、一閻浮提の人の懺悔滅罪の処なり。言う所の「戒」とは防止を義と為す。謂わく、無始の罪障を防ぎ、三業の悪を止むる故なり。宗祖の云わく「此の砌に臨まん輩は無始の罪障忽ちに消滅し、三業の悪転じて三徳を成ぜんのみ」〔一五六九〕云云。豈非を防ぎ悪を止むるに非ずや。

 

 

② 当に知るべし、本門の戒壇に事有り、理有り。理は謂わく、義理なり。是れ則ち事中の事理にして述門の理戒に同じからず。其の名に迷うこと勿れ。故に亦義の戒壇と名づけんのみ。

 

 

③ 初めに義理の戒壇とは、本門の本尊の所住の処は即ち是れ義理、事の戒壇に当たるなり。経に云わく「当に知るべし、是の処は即ち是れ道場」とは是れなり。天台の云わく「仏其の中に住す、即ち是れ塔の義」等云云。故に当山は本門戒壇の霊地なり。

 

 

④ 亦復当に知るべし、広宣流布の時至れば一閻浮提の山寺等、皆嫡々書写の本尊を安置す。其の処は皆是れ義理の戒壇なり。

 

 

⑤ 然りと雖も仍是れ枝流にして、是れ根源に非ず。正に本門戒壇の本尊所住の処、即ち是れ根源なり。

 

 

⑥ 妙楽の云わく「像未の四依、仏法を弘宣す。化を受け教を稟け、須く根源を討ぬべし。若し根源に迷う則んば増上して真証を濫さん」等云云。今日本国中の諸宗諸門の徒、何ぞ根源を討ねざるや。浅間し、浅間し云云。宗祖の云わく「根深ければ枝繁く、源遠ければ流れ長し」〔一〇三六〕等云云

 

 

⑦ 凡そ此の本尊は久遠元初の自受用の当体なり。豈根深く源遠きに非ずや。故に天台の云わく「本極法身は微妙深遠なり」等云云

 

 

⑧ 次に正しく事の戒壇とは、秘法抄十五三十一に云わく「王法仏法に冥じ、仏法王法に合して、王臣一同に三の秘法を持ちて、有徳王・覚徳比丘の其の乃往を末法濁世の未来に移さん時、勅宣並びに御教書を申し下して、霊山浄土に似たらん最勝の地を尋ねて戒壇を建立すべき者か。時を待つべきのみ。事の戒法と申すは是なり」〔一五九五〕等云云

 

 

(法華取要抄文段) (御書文段 542~543)

 

 

 

ここでは分かりやすく段落ごとに番号をふらせて頂いた。

 

全体をその意義ごとに大まかに分類すれば、①~③までは戒壇の大御本尊様のみのことを述べられている。すなわち戒壇の大御本尊様の一か所を取り上げ「事」と「義」を立て分ける「事相に約して」の「義の戒壇」を真っ先にあげられているのである。ここでいう所の「義理」とは事相に約しての「義理」である。注意しなければいけないのは、ここにおいての「義の戒壇」には嫡々書写の御本尊は一切考えに入っていないということである。

 

次に④~⑦までは戒壇の大御本尊様の御在所と嫡々書写の御本尊の御在所を比較相対して「義」とそれに相対する「事」を説く。いうまでもなくここで日寛上人の仰せの「皆嫡々書写の本尊を安置す。其の処は皆是れ義理の戒壇なり。」の「義理」とは法体に約しての義理であり、それに相対する「事」とは根源の法体である戒壇の大御本尊を指すのである。

 

最後に⑧において「正しく事の戒壇」として広宣流布の暁の御遺命の戒壇をもって究極の事の戒壇とされている。

 

それでは各段落ごとに拝してみたい。

 

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